日付 : 2008年11月14日 (金) 件名 : いろいろと… 10日くらい過ぎました。少し落ち着いたとはいえ、あの日以来自分でも驚くくらい落ち込んでしまいました。彼の今の境遇を想像してこれからのことを思って暗くなり、ふとずっと昔のことを思い出して一瞬ほんわかな気分にもなったり、心が千路乱れ続けています。マスコミの報道、世間の反応…。音楽史上最高の売り上げを 誇った音楽家の凋落の姿は、一部の人たちにとってはよほど美味なことのようです。ある人はここぞとばかりに批判し、ある人は躊躇いがちに擁護し、ある人はただ嘲弄し、またある人はまるですべてを知っているかのように説教めいた語りをする。親しい人がそういう立場になって、これほどに居た堪れない気持ちになるのかと思 い知りました。 そして今回の刑事事件とは関係のない過去の出来事などまで持ち出される――それも週刊誌の、裏を取ってない明らかな飛ばし記事でしかないものまで、一般の人たちの多くは素直に信じているのだなと、改めて報道の怖さが身に染みました。ひとつひとつ、それは違う、それはこういうことでしょう、と反論したくなる気持ちを ずっと抱えて10日過ぎました。ご家族のお気持ちはいかばかりかと思います。私は、もし自分のことで事実と違うことを誰かに書かれたり言われたりしたら反駁せずにはいられない性格です。だけど、彼は……てっちゃんは(単なる日記なのでいつもの呼び名で書きます)、考えてみると、そういえば反論やら弁解を一度もしたこと がないのですよね…。 刑事事件であるので、裁判が終わるまで余計なことは言及できないですが、他のことに関してだけは言いたくなります。 彼の資産だった100億だか数百億だかのお金、そしてレコード会社、出版社、関連会社、メディア、私を含めた関係者に与えた莫大なる恩恵、それは彼の作品のみで得られたものです。負債を抱え込む前の彼は、彼の作品のみで、普通の人が得られないような途方もないお金を稼ぎました。ある人は彼の成功を「ただ時流に乗った だけ」と言う。でも「時流に乗って」「運良く」何千億も売り上げるのって簡単なことなんでしょうか。そういう人は、どうやれば時流に乗るかわかっていても「賢明だから」乗れるはずの時流に乗らなかったのでしょうか。1曲2曲なら偶然も運だけでもありうるでしょうけど。どうやって時流に乗ればいいのかさえ私にはわかりま せん。音楽をやる以上売れることは自分の作品が認められた証だから乗れるものなら一度くらいは乗ってみたいものです。少なくとも負債を抱えて魑魅魍魎の世界に飲まれる前に彼が得たものは、誰かを騙して得たものでもなく、あくどいマネーゲームをしたわけでもなく、ただただ音楽という手段で、彼の作品のみで得たものです 。 彼の常軌を逸した浪費についても批判されています。確かに愚かな遣い方だとは私も思うけれど…、負債を抱えた以降もそれが止められなかったのは批判されてもしょうがないのかもしれないですが…。でも全盛期に限って言えば、100億以上の資産がある上に毎年莫大な印税が入ってくる状況だったのです。私自身、自分がそん な途方もない資産があったら金銭感覚がめちゃめちゃ狂う自信はあります。ただ私はずるいから、周りの反感を得たくないから、浪費しても控えめにこっそりするかなあと思う。てっちゃんはなんというか、新しいおもちゃを手に入れてみんなに自慢したい子供のような感覚で浪費を隠すことをしなかった。そこらへんの空気の読め なさというか天然というか素直というか正直というか裏がないというか…。近しい人にはそんな感じにしか見えなかったのだけど、知らない人にとったら「お金があるのをひけらかして…」と反感を持たれるところだったんでしょう。生き方が下手なんだな…って思う。 でも…とにかく、(飽くまでも負債を抱える前の状況でのことですが)、それだけの資産を持った人がどういうお金の遣い方をしていただろうが、彼自身がまっとうに稼いだお金である限り、他人がどうこう言う問題じゃないと思います。まずは自分がそれだけのお金を持った時に自分がどうなるか心の中でじっくりシミュレーシ ョンしてみてほしい。いや、想像を絶するお金なので、実際になってみないとわからないですけど…。 実際は気が弱そうで決して人と対立したがらない穏やかな人です。デビューの頃から知っている近しい人たちはみな、彼の憎めない天然な性格と子供ぽい見栄張りなところを知っているせいか、その浪費の仕方には呆れはしていたものの決して批判的には見ていなかった。むしろ誰もが心配していたと思います。爆発的に売れてか らは彼の周りには常時たくさんの知らない人がいるようになって、彼自身も客観的に自分を見られるような状況ではなかっただろうし、私自身その頃の彼とはあまり接触がなかったので、鈴木あみさんのプロジェクトで再び一緒に仕事をするようになる以前のTK時代のことはあまり知りません。 その、元々まっとうに稼いだ莫大なお金をすべて失い、さらに何十億の負債があり、今は刑事事件で拘置所にいる彼…。25年間、彼ががんばって得たものがこんなふうに消えるなんて…、そして彼が詐欺事件の主犯格とされているなんて、私は未だに信じらないし、彼が失ったものを考えると悲しいというより呆然としてしまいま す。私が作詞した楽曲の一部も二重登録されているようです。二重登録をした会社の責任者という人を今回の報道で初めて知りました。私に承諾確認をしてくるべきはその人だと思うのですが見たこともない人です…。腑に落ちないです。是非、裁判で事の経緯や関係しているすべての事を明らかにしてほしいです。貧すれば鈍する ――そう言ってしまえば簡単ですが…。てっちゃんは単純に浪費や事業破綻でお金をなくしただけではないことは、私にも想像できます。 …我慢してきたけど長々と書いてしまいました。一部の報道で、ひとりの音楽家の凋落を揶揄し、刑事事件とは全く関係のないことまであげつらって批判している様を見て黙していられませんでした…。彼は多大な税金を国に納め、多方面に莫大な寄付もしてきました。音楽業界を史上空前に潤わせました(その音楽の在り方への 批判や功罪はあるにしても)。私も含め多くの人たちがその恩恵に預かりました。吝嗇どころかお金に無頓着過ぎたことが仇になってしまった…。そんな彼が凋落した途端に掌を返すような態度になる人たちを見て、物悲しい気持ちになっています。でも世間てそういうものなのですよね。私だって近しい人だからこう思うだけで、 知らない人のことだったら、かわいそうに…と思うくらいで特に心を痛めることないだろうし…。 今頃てっちゃんはどうしているのかな…って思います。ちゃんとご飯食べられているだろうかとか…。ご家族もファンの方たちもそう思っておられることでしょう。日本では裁判で確定判決が出る前にすでに社会的に断罪されてしまいます。私も事実はわかりません。裁判で明らかにしてほしいです。ただひとつだけ、負債に追わ れて仕事どころではないくらいがんじがらめになっていた苦しい状況から、今は一時的に解放されているのかなと思うと、そこだけは少しだけほっとします。とにかく心も身体も元気でいてほしいと願っています。 --------------------------------- Power up the Internet with Yahoo! Toolbar.